今回ご紹介する作品は、伊坂幸太郎さん著『アイネクライネナハトムジーク』です。
人気作家の伊坂幸太郎さんですが、実は恋愛ものの作品が非常に少なく、この作品はそんな伊坂幸太郎さんとしては珍しい「恋愛」がテーマになっています。
ただ、きゅんきゅんやどろどろとした恋愛ど真ん中というものではなく、爽やかであっさりとした、それでいてどこか懐かしいような感情を覚えさせてくれる作品だと個人的には感じました。
この小説を読み終わった時、多くの方が恋をしたくなるのではないでしょうか。
ちなみに、2019年9月に三浦春馬さん・多部未華子さん主演で映画化もされて話題になりましたね。僕はまだ映画を観ていませんが、時間があれば観に行こうかと思っています。その際は映画のほうのレビューもしたいですね。
リンク
以下、少しばかりネタバレを含みますので、まだ読んでいない方は十分に注意してください!
この本のこと
基本情報
著者:伊坂幸太郎
発売日:2017/8/4
出版社:幻冬舎
ページ数:341ページ(文庫)
あらすじ
妻に出て行かれたサラリーマン、声しか知らない相手に恋する美容師、元いじめっ子と再会してしまったOL……。人生は、いつも楽しいことばかりじゃない。でも、運転免許センターで、リビングで、駐輪場で、奇跡は起こる。情けなくも愛おしい登場人物たちが仕掛ける、不器用な駆け引きの数々。明日がきっと楽しくなる、魔法のような連作短編集。
【アイネクライネナハトムジーク/伊坂幸太郎】
登場人物紹介【ネタバレ込み】
『アイネクライネナハトムジーク』は、『アイネクライネ 』『ライトヘビー』『ドクメンタ』『ルックスライク』『メイクアップ』『ナハトムジーク』の6つの短編集で構成されています。
タイトルによって主人公は替わってきますが、『アイネクライネ 』に出てきた人物が『ドクメンタ』に出てきたり、『ライトヘビー』の数年後が『ナハトムジーク』で描かれていたりなど、6つの短編集がそれぞれどこかで繋がっています。
その分、登場人物が多く時系列がやや複雑ですが、それでもすらすらと読めてしまうのが伊坂幸太郎さんの構成力の凄さでしょう。
ここからは、各章ごとの主な登場人物を紹介していきます。
アイネクライネ
この章は、マーケット会社の社員・佐藤の視点で物語が進んでいきます。
アイネクライネはドイツ語で「小さな」という意味を持ちます。
ライトヘビー
この章は、美容師の美奈子の視点で物語が進んでいきます。
時間軸は『アイネクライネ 』とほぼ同じです。
ドクメンタ
この章は、『アイネクライネ 』にも登場した「藤間」が主人公になって物語が進んでいきます。時間軸は『アイネクライネ 』の半年後ですが、藤間の過去も描かれていきます。
ドクメンタというのは、5年に1度、ドイツで開催される現代美術の展覧会のことです。物語の舞台が免許センターなので、『ドクメンタ』は同じく5年に1度の自動車運転免許の更新にかけられています。
ルックスライク
『ルックスライク』は、「高校生」と「若い男女」の2つで構成されています。
「高校生」は久留米和人、「若い男女」は笹塚朱美の視点で物語が進みます。
時間軸は、「高校生」が『アイネクライネ 』から10年後で、「若い男女」は「高校生」の約20年前です。
メイクアップ
『メイクアップ』は化粧品メーカー勤務の窪田結衣の視点で物語が進んでいきます。
個人的に、この章はほかの章とそこまで関連が深くないような印象です。
ナハトムジーク
この章は、ウィンストン小野を主軸にして、それを取り巻く人たちの物語が描かれています。
ラストにふさわしく、これまでの登場人物がふんだんに出てきます。時間軸が頻繁に変わるので少し複雑ですが、最後のシーン(現在)は『アイネクライネ 』から19年後です。
ちなみに『ナハトムジーク』は「夜の曲」という意味があります。
感想
『アイネクライネナハトムジーク』に登場する人物を紹介してきましたが、改めてめちゃくちゃ多いですね(笑)。しかも、主な登場人物を抜粋しての紹介なので、実際はさらに多くの人たちが登場します。
「こんなに登場人物が多いと読むの大変なんじゃ」と思う方もいるかもしれませんが、そこは気にしなくて大丈夫です。実際、ほとんど読書をしない僕の友達も「すらすら読めた」と、一日で読破していました。
テンポが良く、それぞれの物語がほどよく繋がっているので、続きが気になって仕方がなかったのでしょう(笑)。
僕の感想も一言だけ言わせてもらうと、群像劇の恋愛ものでこれ以上の作品はないと思っています。伊坂さんお得意の大どんでん返しのような展開はありませんが、人と人との繋がりを感じさせるほっこりした作品です。
よくある恋愛ものの小説に飽きてきた方にはぜひ読んでもらいたい一冊となっています。
リンク